振動目覚まし #対談

ドラマ『サイレント』のシナリオ考証に携わった小谷野依久に聞く、聴覚障害と認知症の関係性 

2023.11.03

耳が聞こえない、聞こえにくい状態のことを聴覚障害といいます。聴覚障害を持つ人は日常生活をどのように送っているのか、素朴な疑問を持つ人もいるのではないのでしょうか。

 東京都中途失聴・難聴者協会の理事を務める小谷野依久さんは、幼少期に耳が聞こえなくなり、現在は左耳に補聴器、右耳に人工内耳を使用して聴覚を補っています。聴覚障害にまつわる活動を幅広く行い、その一環として、ドラマ『サイレント』、『ファイトソング』のシナリオ考証を行った人物でもあります。

今回、アデッソの経営企画室室長の長谷川大悟、R&Dマネージャーの長谷川賢悟は、聴覚障害者の日常生活をテーマに小谷野さんとの対談を実施。その中で、聴覚障害と認知症が深く関係していることを教えてもらいました。

また、アデッソが開発した音だけでなく振動で起こす振動商品(MY-106)にも触れ、聴覚障害を持つ人たちの実生活が時計とどう共存していくのかについても紹介します。 

難聴が認知症を進行させる可能性

長谷川賢悟(以下、賢悟):本日はよろしくお願いいたします。弊社のことはどこで知っていただいたのでしょうか? 

小谷野:私自身、アデッソの日めくり電波時計を持っているんですよ。曜日が大きく表示されるので、朝のゴミ出しを忘れないために活用しています。

私が所属している「東京都中途失聴・難聴者協会」では高齢者も多く、そういった人たちにとって便利な商品を紹介しようと探していたところ、アデッソを見つけまして。そこで、偶然にも私が普段使っている商品を開発する会社であることを知りました。 

賢悟:ありがとうございます。正直、もともとは日めくりカレンダーをデジタルにしようと考えたのが始まりだったので、高齢の方に向けたというわけではなかったんです。ただ、認知症介護に携わる方がAmazonのレビューで広めてくださり、今では多くの認知症グッズとして使っていただけるようになりました。

小谷野:認知症だけではなく、脳梗塞などで高次脳機能障害になってしまった方にも使えそうですよね。私のように、朝、寝ぼけて火曜日と水曜日を間違えてゴミを出そうとしてしまう人にも。

賢悟:不燃ゴミだと第1・第3火曜日など、もっとややこしくなってしまいますよね。日めくり電波時計は第何曜日と表示されている商品なので、活用していただけるかなと思います。

小谷野:最近は認知症と難聴の関係も課題になっているんです。もともと聞こえていた人が難聴になると、人とのコミュニケーションや刺激が減るので、だんだん感覚が鈍くなってしまうことも考えられます。 

この商品のように、目で見て自分で理解できるのは気持ちの良いことなので、大きく曜日が表示されている日めくり電波時計はみなさんに紹介したいですね。

賢悟:認知症と難聴が関係しているのには驚きました。

振動アラームのメリット・デメリット

賢悟:聴覚障害の方に使用していただいている振動する商品でいうと、2024年に新たな商品を販売する予定です。こちらの商品は、振動と音で起床できるものになります。音のみ、振動のみ、音+振動の3つの切り替えが可能です。音のボリュームも変えられます。

小谷野:人によって聞こえづらい音は異なるのですが、中には高音域が聞こえない難聴者も多いので、振動のみで使えるのは良いですね。

賢悟:高音域が聞こえづらいというのは?

小谷野:電子音が聞こえづらいです。電子レンジやキッチンタイマーの音、冷蔵庫を開けっぱなしにした時の音など、日常生活で聞こえない音がたくさんあります。補聴器や人工内耳は人との会話を優先して作られているので、補聴器をして会話ができていても、電子音には気がつけない可能性があります。

長谷川大悟(以下、大悟):反対に、あるといい機能などはありますか?

小谷野:振動目覚まし時計に、クリップ付きのストラップが付いていると良いかもしれません。クリップをパジャマや枕につけるだけで安心して寝られますし。

あとは、人によって気づく振動の度合いは異なります。スマートウォッチを使用する人もいるのですが、手の甲の感覚は鈍いといわれていることもあり、私はそれで起きられませんでした。

賢悟:アデッソから出ている商品も、ものによって振動の強度は異なります。新たに販売する予定の商品は振動の強弱が設定できるので、好みに合わせて選んでいただきたいですね。あとはサイズ感なども見ていただけたらと。

小谷野:振動に敏感な人も多いので、一回で起きられそうですね。振動の強さを知りたい人もいると思うので、イメージでわかると良い気がします。

大悟:動画は出しているのですが、やはり実際に使ってみないとわからないと思うので、実物を手に取っていただくのが一番正確ですね。

小谷野:高齢になってから新しいものを使おうとすると、使い方がわからないなど慣れるまで時間がかかるかもしれません。説明文を読まなくてもに操作ができるよう、動画での紹介などがあればそこまで難しくはないと思います。

音の代わりとなる光の役割

大悟:振動ではなく、光で起きることもありますか?

小谷野:私の場合、振動アラームのほかに部屋の電灯をタイマー設定できるものを使っています。徐々に電灯が明るくなる設定にしているので、急に起きることはありません。

賢悟:睡眠が深い時にアラームで起きるとびっくりしてしまいますもんね。

大悟:話は変わりますが、光でいうと玄関のチャイムを光で知らせてくれる商品もありますよね。

小谷野:使っている方はいますね。ただ、目を逸らしていると光に気づかないこともあります。なので、あらかじめ訪問者が来る時間帯を聞いておいて、その間だけ意識しておくなど、ほかにも工夫は必要です。

賢悟:小谷野さんが脚本の監修を担当されたドラマ「silent」にも登場してましたね。ものすごく興味深く拝見しました。

小谷野:ありがとうございます。

 [対談感想]

小谷野さんからのお話は、非常に価値ある情報でした。聴覚障害を抱える方々の生活に寄り添うために、今後のアデッソの商品開発に活かしていきたいと考えています。たとえば、高音域が聞こえにくい難聴の方は、低音域の音のほうが聞き取れることや、キッチンタイマーや電子レンジ、生活にあふれる多くのアラート音が聞こえにくいことなど、具体的な指摘は今後の商品開発に不可欠な情報となるでしょう。聞こえに課題を抱える方々の生活を向上させるために、アデッソは引き続き努力していこうと思います。