オレンジイノベーションプロジェクト参加で見えてきた「本当に必要な日めくりカレンダー」とは?

共生社会を目指すオレンジイノベーションプロジェクトとは?
アデッソ株式会社は、経済産業省が主催する「オレンジイノベーションプロジェクト」の実践企業として採択されました。
オレンジイノベーションプロジェクトについて
オレンジイノベーションプロジェクトとは認知症になっても自分らしく暮らし続けられる「共生」社会の実現を目指し、認知症の人が主体的に企業や社会等と関わり、認知症当事者の真のニーズをとらえた製品・サービスの開発を行う「当事者参画型開発」の普及と、その持続的な仕組みの実現に向けた取組を推進しています。
関連サイト:https://www.dementia-pr.com/
なぜアデッソはオレンジイノベーションプロジェクトに参加したのか?
アデッソがオレンジイノベーションプロジェクトに参加した理由
アデッソのデジタル日めくり電波時計は、もともと記念品などでの利用を想定して開発された製品でした。しかし実際に販売を開始すると、オンラインでの注文が予想以上に伸びていきました。
お客様の声を集めてみると、ある特定のユーザー層、特に初期の認知症を抱えるご本人やそのご家族から高い支持をいただいていることがわかったのです。
多くの高齢者やその介護者の方々にご利用いただくなかで、アデッソはこの製品が日常生活を支える大切なツールになっていることを実感しました。もっとたくさんの当事者やご家族の声を直接聞き、それを製品に反映していきたい、そのような想いから、認知症当事者との共創を掲げるオレンジイノベーションプロジェクトへの参加を決意しました。
アデッソが目指す「認知症当事者の自立支援」と「介護者の負担軽減」
兄弟である社長と副社長自身も、認識できることが徐々に減っていき不安を抱える祖母やそんな祖母を支える母の苦労を間近で見てきました。祖母は日付や曜日の感覚が薄れ、同居する母に何度も日付を尋ねたり、時計を見ても時間がわからず混乱してしまったりする毎日でした。私たちのデジタル日めくり電波時計をご利用いただいているご家庭と同じような状況でした。
そんな中、祖母に渡したデジタル日めくり電波時計が日付や曜日を認識する手助けとなり、祖母の精神状態が安定し、介護を担っていた母の負担も軽減されました。
アデッソでは認知症当事者も「自分らしく」暮らし続けるために、介護者が「少しだけ心に余裕を持てる」ように、そんな未来をつくるために、現場の声を聞き、まだ世の中にないソリューションをこれからも形にしていきます。
9回のオレンジイノベーションプロジェクトイベント参加実績をご紹介します
2024年にオレンジイノベーションプロジェクトに採択されてから様々なイベントに参加させていただきました。
・2024年8月 オレンジイノベーションプロジェクトBLG八王子
認知症当事者4名とシニアボランティアの方にご意見を伺いました
・2024年10月 神奈川県聴覚障がい者福祉センター祭り
聴覚障がいをお持ちの方に日めくり電波時計とお薬クロックの紹介をさせていただきました
・2024年8月 横浜市舞岡柏尾地域ケアプラザ
ケアプラザにて日めくり電波時計HM-9280を1ヶ月間利用していただき、感想をお伺いしました
・2024年9月 おおた健康寿命わっしょい!フェスティバル
アクティブシニア層のみなさんに日めくり電波時計とお薬クロックを紹介させていただきました
・2024年9月 オレンジイノベーションプロジェクトアリオ北砂店
アリオにご来店の高齢者や認知症の方々からお話しを伺いました
・2024年9月 オレンジイノベーションプロジェクト開発製品展示会
展示会にデジタル日めくり電波時計シリーズを展示し、認知症予備軍の方や認知症の方々からアドバイスをいただきました
・2024年11月 オレンジイノベーションプロジェクト大阪
若年性認知症(軽度)の5名の方から商品について様々なアドバイスをいただきました
・2024年12月 若年性認知症横須賀の集いタンポポ会
当事者5名、ご家族2名、サポーター7名、タンポポ会代表の計15名の方々からお話しを伺いました
・2025年1月 池上長寿園(若年性認知症支援相談窓口)
以前にもお話しを聞かせていただき3回目のご意見交換をさせて頂きました
日めくりカレンダーへのリアルなご意見
イベントを通して実際にお伺いしたことをQ&A形式でご紹介いたします。
オレンジイノベーションプロジェクト大阪 認知症の人とみんなのサポートセンター(大阪玉造)でのQ&A
若年性認知症(軽度)の5名の方に実際に商品についてご意見をいただきました。
❓日常生活で「時間」を確認するのに困ることはありますか❓
・特に困っていません。スマートウォッチや腕時計で時間・日付を確認することが多いです。スケジュールと連動して通知も来るので、置時計を見る機会はあまりありません。
❓ 実際に紙の日めくりカレンダーは使っていますか❓
・あるけれどあまり確認していません。家族がめくってくれています。
❓ 日付や曜日の表示について、どんな見え方が良いと感じますか❓
・曜日と日付が均等な大きさで表示されていると見やすいです。
・私は特に曜日を確認したいことが多いので、曜日が大きいと嬉しいです。曜日だけを大きくしたり、表示される内容を変えたり、自分で設定できたら良いですね。
❓カレンダーや時計にどんな情報が表示されていると良いですか❓
・情報が多すぎると混乱します。六曜や温度などはあまり必要ありません。必要な情報だけが見られたら良いです。
❓アナログ時計とデジタル時計は、どちらが見やすいと感じますか❓
・デジタルの方が分かりやすいです。アナログ時計は、理解することが難しくなってきたので、数字で確認できる方が助かります。
❓見た目のデザインについてはどう感じますか❓
・全体的に昔ながらのデザインのように感じました。長方形(四角)だと冷たい印象があるので、丸型や楕円形など、柔らかい形の物が欲しいです。
❓日めくりカレンダーに他にどんな機能があれば便利だと思いますか❓
💡センサーで点灯するバックライト機能があると暗いところでも使えて良いですね。
💡「今は何時」「今日は何曜日」などを音声で教えてくれる機能があれば使いやすいです。
💡予定やリマインダーをスマホと共有できれば、もっと使いやすくなりそうです。
💡色々と機能をつけると高くなると思いますが、5,000円以上になっても求めている機能が付いていれば買います。
池上長寿園でのQ&A
池上長寿園様にご協力をいただき、昨年の11月、12月、そして3回目である今年1月と実際にデジタル日めくり電波時計を見ていただきながらご意見を伺う機会を持ちました。今回は3回目の聞き取りについてまとめています。
❓日付や曜日の表示について、どんな見え方が良いと感じますか❓
・HM-301は、曜日の表示が三角のパーツで構成されているのですが、中央に×(バツ)のような形があり、そこに目が行ってしまい、どんな文字か分かりづらくなります。また、「水(すい)」の字が、離れて表示されていると一文字として認識できなくなってしまいます。
・HM-003のように小さくても隙間が詰まっている方が、ひとつの文字として理解しやすいですね。
・NAR-102のように、日付と時刻がセパレートで分かれているデザインは、情報量が多くても見やすいです。
・HM-9280のように、時間帯が8分割で表示されていると、「午前」「午後」だけでなく、「今が一日の中でどのあたりか」が分かるのが良いです。
・徐々に漢字の読み書きが難しくなっているのですが、スマートフォンのように滑らかなフォント(文字)で表示されていると、読みやすさが全然違います。
❓ アナログ時計とデジタル時計は、どちらが見やすいと感じますか❓
・アナログ時計の針は、見ても「今何時なのか」が分からなくなることが多いです。デジタル表示でも、日付、時刻、曜日の区別がつかなくなることがあるので、表示の工夫が必要だと感じます。
❓デザインやサイズについてはどう感じますか❓
・最初見た時に、ただの時計かと思ってしまいました。縦型よりも横型の方が馴染みがあります。
・ヘルプカードという支援が必要な人が携帯するカードがあるんですが、それをカバンの持ち手に引っかけて使う方が多いんです。それくらいのサイズで使える時計があると、日常でもっと身近に感じられるかもしれませんね。
❓日めくりカレンダーに他にどんな機能があれば便利だと思いますか❓
💡たとえば「今日はデイサービス」「今日は病院」といった予定を、音声でリマインドしてくれる機能があるととても助かります。お薬の時間を教えてくれるのも助かります。
💡ボタン一つで、デジタル表示とアナログ表示を切り替えられる機能があると、使う人の好みに合わせられていいですね。人によって得意な見方が違うので、選べるのは安心です。
💡アラームが鳴る時にランプも点滅すると、音が聞こえづらくなってからも気付く事ができますよね。
これからもアデッソはみなさんからの「生の声」で進化していきます
私たちが8ヶ月の活動を通じて得た気づき
音声読み上げ機能やライト機能など、多くの方が共通して求めている改善点がある一方で、認知症の進行度や、認識の得手・不得手によって、「見やすい」「見にくい」と感じる表示にも個人差があることを、あらためて実感しました。多くの方の日常を手助けするために、どのような改善をすれば良いかを会社全体で話し合っていきたいと思います。
また、アリオなどでのイベントでご高齢の方へチラシをお渡しした際、文字が見づらく困っている方がいらっしゃいました。その他、神奈川県聴覚障がい者福祉センターでは、「ネットやスマホが使えない人でも、電話やFAXで購入できるようにしてほしい」「身近な補聴器販売店でも購入できるようにしてほしい」というご意見もありました。
こうした実際の様子やいただいた声を通じて、「みなさんに分かりやすく商品を伝えるための工夫」や「買いたいと思ったときに、すぐ購入できる環境づくり」の大切さも感じました。
これからも大切にしていきたい「ものづくり」への思い
オレンジイノベーションプロジェクトを通して私たちだけでは気付けない皆さんの困難や悩みを知ることができました。また私たちが皆さんの助けになると思い搭載した機能や表示が皆さんにとっては不必要である可能性についても知ることができました。
これからもアデッソは困っている方々の声に耳を傾け、その課題を解決できる「ものづくり」をしていきます。